太古の場所


知識とことばを司る脳、前頭葉の下に大脳辺縁系という部位がある。
直感と情動を司っているそれは、脳の最も古い部位である。
ヒトの直感と情動。
本能と呼ばれる食欲・性欲・睡眠欲・生きる意欲。
喜怒哀楽・情緒・説明のできない神秘的な感覚・睡眠中の夢。
さらには、記憶や自律神経活動をも左右している部位。
進化の過程では、魚類にまでさかのぼる部位です。
ヒトが生きて死んでいくための縁の下の力持ち。

“五感は誤らない。 誤るのは判断だ”
 
ゲーテのことばです。

深い森を歩く時に感じるフカフカした落ち葉の感触、しっとりとした空気感、緑の匂い。
木々の梢の間からふりそそぐ光はやわらかく感じ、体内に持っている感情と不思議と一致する。
外界の刺激が身体の中の何かと一致する。
太古からのおくりものは連綿たる記憶である証。

わが宿の いささ群竹 吹く風の
        音のかそけきこの夕べかも       大伴家持 

かさこそと風に吹かれる竹の音が聞こえる。
太古の身体がつたえる。


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